新しい生活の始まりに期待と不安、緊張で眠れない夜が幾度もあった、この時期。
春になると読みたくなるのが、石垣りんさんの「花嫁」のエッセイ。
もう覚えるほどに読み込んでいるのに、何度も読み返しています。
そこにはいつもと変わらない、身も心もほわっと温かくなる世界があります。
目の前に湯けむりが立ち込めてくるほど。
舞台は、真っ白な衣装に身を包んだ花嫁が神社の境内を厳かに歩く風景。を題名から想像したのは私。花嫁に衣装はない、、。
石垣りんさんのユーモラスでユニークな魅力があふれていて、
それでいて優しく温かい。ノスタルジックで、大切な思い出に触れたときのような懐かしさもあるのです。
エッセイに不可欠な要素がすべて凝縮された素晴らしい作品。
何度も触れたくなるのは、その完成度に深く魅了されただけではなく、そこにある石垣りんさんの人間性を感じることが心地よいから。
心の琴線を揺さぶるような作品は、豊かな才能と人間性の融合。
日々の生活の中で、素晴らしい作品にふと出会えたり、何度も触れることができるなんて、ほんとうに幸せ。