田中英光さんの「オリンポスの果実」。この作品に出合ったのは私が19歳の時。
主人公がある一人の女性に心を寄せ、好きだという気持ちをひたむきに述べている。
読むたびにドキドキする。まるで同級生のラブレターをうっかり読んでしまったようなリアルさとフレッシュさがありながら、もちろんそれだけではなく
文学的で豊かな才能と魅力があふれるほどに詰まっている。
若さゆえの一途でピュアでまっすぐな部分、感性豊かなところが時に危うくて、違う意味でもまたドキドキさせられる。
ナイーブでデリケートな主人公の思いは、しだいにこちらにまで波及してきて、ときめいた状態がずっと続く。読み手を全く飽きさせないままに読み終えてしまう。
最後は圧巻で、心臓が持たないくらい、もうドキドキが本当に止まらない。
その状態が読み終えても続くのだ。
いったい私はどうなってしまったんだろう。完全に心を奪われた感じ。
唯一無二、今までに出会ったことのない強烈な印象を残したのがこの作品だった。
今まで(19歳から現在まで)7回の引っ越しでも全く迷うことなく、手元に残したこの本。
引っ越し当日に、引っ越し業者さんに言われたことがある。
「迷う時は処分して大丈夫ですよ」と。
本当にそうだ。絶対残したいと思うものはいつも迷わない。
迷うものはいずれ処分している。次の引っ越しの時にはなくなっていた。
二度と買い戻せない思い出の品以外は、迷ったら処分でいいのだと思う。
また捨て活が進みそうな予感😊